金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

酵母無添加生酛を考えてみる。

数回にわたり「生酛系」の酛をつづって参りましたが、今回でひとまず「完結」したいと思います。生酛系は天然水仕込みで醸造用乳酸不使用で清酒酵母無添加で造る商品というのが最近よく見受けられます。スーパーオーガニック仕込みを目指すならば、更に「有…

生酛 ~ なぜ摺る(する)か? ~

酛を語り始めて何回目になるでしょうか?前回の「生酛系」の続編になりますが、ちょいと内容が高度になりそうなので、なるべく分かりやすく説明したいと思います。生酛と山廃の違いは、酛摺り(もとすり)という作業を行うか否かによります。酛摺りとは、蒸米…

「生酛」←読めますか?

前回のブログで「酛」特集をやってみましたので、その流れで生酛系のお話をやってみたいと思います。生酛と書いて「きもと」と読みます。山廃と書いて「やまはい」と読みます。まぁ日本酒に詳しい方にはそれくらい読めるよって感じでしょうけど、馴染みのな…

酒母 or 酛(もと)?

飲み手の皆さんにはあんまり馴染みがないと思いますが、日本酒を造る工程の中に酵母を育てる「酛」(もと)と呼ばれるものがあります。別名 酒母(しゅぼ)と呼ぶ人もいるのですが意味は同じです。日本酒は「並行複発酵」という一つのタンクの中で、糖化と発酵が…

税務調査がありました。

本日のテーマをご覧になった方は、映画マルサの女を想像した人も多いのではないかと思いますが、あれは脱税逃れを主な目的とした法人に税務署の「ガサ」が入る場面を興味深く映画化したものでした。一般的に酒蔵を対象とした税務調査なるものは、法人税の追…

酒造りに向いているタイプ。

今回は前回の内容の続編です。日本酒造りの門を叩こうかどうかと悩んでいる方などには参考になるかもしれません。お酒造りにどういう人が向いているのか?結局は「やる気」であることは前回をブログで記したところですけど、もう少し具体的に話を進めてみた…

酒蔵で働きたい人へ。

今夜は出品酒の麹造りの宿直なので、仕事の合間でこうしてブログを書いてみたいと思います。最近はあまり思わなくなりましたが、この世界に入った駆け出しの頃は、土日祝日休みの職種や会社に勤めている方が羨ましかったりした時期がありまして、そういう日…

2019年産 酒米のコンディション。

前からこのブログでお伝えしているように、僕らの蔵では現在、全国新酒鑑評会の出品に向けた造りが真っ最中となっています。普段の仕込みで使う「お米」ですが、大体12月にもなれば早生型から晩成型まで、その年度に刈り取られた「一般米」も「酒米」も全て…

酒造りバカになるな!

日本酒に関する日本酒製造現場からの情報発信ということで当ブログは運営させていただいているわけですが、今日は令和時代の未来の「杜氏像」「蔵人像」を模索してみたいと思います。伝統産業の世界におりますと、昔ながらの慣習にとらわれすぎてしまうとこ…

成人の日に日本酒を!

世間は3連休真っ只中!僕ら酒造り職人は、カレンダーではなく「仕込み予定表」を基準にスケジュールは決まります。よってこの3連休も当然「全出勤」!成人の日が絡んでの3連休だそうで、思わず自分の成人の日を思い返してしまいました。ドカ雪でね。大雪で大…

出品酒造りスタートです。

全国新酒鑑評会に向けた「出品酒」造りがスタートしています。おそらく全国各地の酒蔵で、同じような光景が「今」見ることができるのではないでしょうか?作業に関わる杜氏さんや蔵人さんは、そりゃ命懸けですよね。もちろん僕らも「命懸け」です!昨年の成…

麹造りについて。

今夜は宿直です。大吟醸の麹造りのため、それなりの労力を費やします。各蔵の製造環境はそれぞれ違いますから、うちの事情はあくまでもうちに限ったことですし、他のお蔵さんの手法や考え方もそういう製造環境に基づいたものから積み上げたものが多いでしょ…

日本酒業界の今

前のブログでお話ししました通り、うちの蔵での増税後の売上状況がいかなるものか、贅沢品を取扱う我々の現状を報告させて頂きたいと思います。 10月に消費税増税が8%→10%に引き上げられまして、キャッシュレス決済の還元や軽減税率対象の物品で万全を…

日本酒と酒粕と精米とヌカと。

本日の業務は酒粕のビニール詰め作業と言うのをメインで行いましたので、ちょっとそんなテーマでお送りしたいと思います。 日本酒を造るには、基本的に「精米」という工程が必須となります。なぜなら、お米の外側には特に栄養分が豊富で、清酒酵母がそれを取…

そろそろ通常モード?

世間は6日が仕事始めのところが多いようですね。 うちの蔵はいよいよ明日から「仕事始め」!!! 2020年も美味しい日本酒が造れますよう、頑張ります! このブログも、少しでも造り手が酒蔵の情報発信をしたら皆さんに「日本酒を身近に」感じてもらえた…

お正月。酒飲んでますか?

蔵全体の仕事はお正月のため3日までお休みとなっております。しかし、連日当ブログで申し上げている通り、杜氏の僕に「完全休」はありません。 モロミのチェック、酒母の管理、機械設備の電源チェック、FAX・メールの問い合わせなど、ずっと蔵に常駐するわ…

杜氏のお正月

皆さんあけましておめでとうございます。 本年も是非「金賞杜氏の日本酒情報局」を宜しくお願い申し上げます。 元旦ですが世の中の社会人が全員一斉に休日になるような単純化した世の中ではありませんから、時短やら振替休日やらでそれぞれのお正月を過ごし…

2019大晦日、そして2020へ

いよいよ年末も押し迫って参りました。 本日は酒造りの通常業務を終了させた後、実家で親戚一同と2019年最後の一時を楽しんで参りました。 きっと世の中の多くの皆さんが思い思いの時間をお過ごしのことと思います。 年末だった言うのに「レバノンに逃げ…

今夜は忘年会。

うちの蔵は、31日の大晦日まで営業で、年明け4日が仕事始めというスケジュールです。僕は普段、車で通勤をしているんですが、今朝なんて日曜日ってことに加えて世の中いよいよお正月休みに入っている方々が増えているようでして、道はガラガラ。通常より早く…

酒母(しゅぼ)の種類について

仕事納めでいよいよ年越しモードになっている方も多いことと思います。 酒蔵も働き方改革の影響を受けて、年末年始を「なるべく」通常の会社員形態のシフトに近づけるよう努力が必要ですが、その中で酵母を培養する工程で「酒母」(しゅぼ)または酛(もと)…

杜氏と宿直

今夜は麹造りのため蔵に泊まりです。酒造りという仕事はどうしても宿直が伴いますので、各蔵ごとにそれなりの「宿舎」も整ってます。僕はこれまで4つの酒蔵で酒造経験がありますが、今の蔵の宿舎は、今風でキレイな和室に仮眠できるようになっていて、ユニッ…

最近の若いもん

僕、42歳の杜氏です。 日本酒の造り手の主力は30~40代がメインですから、丁度中堅どころって感じになるのでしょうか。 しかし、まだまだ昔気質の出稼ぎの親方で現役バリバリの方も多いので、そういうレジェンドからしたら息子や孫扱いされる程度なの…

杜氏さん達が今一番考えていること

皆さん美味しい日本酒飲んでいますか? 今飲まなきゃいつ飲むの? この時期、冷やも常温も熱燗も、全ての日本酒が「うめぇ~」って感じてしまいます。 でもね、個人的事情を正直に述べると、冬場って飲酒量減るんすよ僕。 僕が勤務する蔵と自宅は車で約20…

アルコール添加酒あるあるパート2

本日のテーマは昨日の続き。 昨日は醸造アルコールの全面否定はもはや議論に無理があるのではないかという見解を述べさせていただきました。 そんなわけで、今日はアル添の議論をもう少し掘り下げてみようと思いますのでどうかお付き合い下さい。 皆様、とこ…

アルコール添加酒あるある。

アル添酒、皆さん好きですか?日本酒のことをあまり詳しくない人のために、ちょっとおさらい。日本酒には米、米麹、水の他に原材料名としてラベルに表記しなければならない物品で、「醸造アルコール」といういわば、焼酎があります。醸造アルコールの原材料…

蔵人達のチャンピオンベルト。

何のこっちゃよくわからないタイトルをつけてしまいましたが今日は我々日本酒造りに関わる人間の働き方の様子について記していこうと思います。酒造りの現場は、日々お酒を運んだり、米洗いの作業や米の受け入れ等で重い物を運ぶ仕事がとても多いです。 ちな…

お酒造りとは?  尊いものである。

酒造りとはあなたにとって何ですか?僕はこれまで飲み手の方々から何度かこの質問をいただいております。飲み手の方々にも色々いらっしゃいまして、「杜氏」というポジションにかなりのリスペクトを表して下さる方、僕みたいな若手の造り手をそれほど信用し…

酒粕の今。

寒さがかなり増してきまして、朝、布団から出るのがマジでつらい!と感じている人も多いんじゃないかと思います。そんな寒い季節、酒蔵従事者として提案したいのは、酒粕を用いた飲み物やお料理です。酒粕っていうのは、ご存知の方も多いと思いますが、お酒…

賞与出ました!

先日のブログにて、杜氏のボーナスがいくら程度かどうか、という話題を紹介しましたが、今年の冬のボーナスが出ましたので再度取りあげたいと思います。まずは、ボーナスって支給してもしなくても良いし、支給額だって会社によってバラバラで、あくまでもう…

酒蔵増えるか!?酒税法改正。

お久しぶりです。先日、酒造業界にとって大きなニュースが飛び込んできました。これまで「清酒製造免許の新規取得」は、現実的に認められないという大前提があったのですが、「輸出用製造限定」にて、新規での製造免許を認めるとの大綱が国税庁より発表にな…