金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

日本酒の飲み方で気になること。

気温がいよいよ下がってきており、居酒屋や自宅で日本酒を楽しむ機会が増える人も多いんじゃないかと思う今日この頃です。

造り手としては、やっぱり冬は繁忙期の感がとっても強いので、酒場に繰り出す機会はそれほど多くはならないのですが、それでも仕事柄この時期の市場動向は気になります。

そこで、普段から僕が気になっている日本酒の飲み方について1点ありますので、せっかくの機会ですので読者の皆さんにも一緒に考えて頂けますと幸いです。

 

「もっきり」ってわかります?「盛り切り」って言い方が語源で派生した呼び方のようですが。居酒屋で日本酒をオーダーすると、木枡の中にグラスが入れられて、グラスから酒が溢れて更に木枡にも溢れんばかりの酒が並々入った状態でサーブしてくれる様子を多く見ます。

あの様相に対して、やめませんか?と言いたい。

お店側の心意気やサービスの意味がそもそもは込められているらしいのですが、もう令和っすよ!はっきり言って古い感ハンパないし、口をとがらせてちゅうちゅうやる様が何とも貧相でかっこ悪いと感じるのは僕だけではないはずです。

お店側も本当の意味を理解してサーブされているのか定かでないし、普通にグラスで良いんじゃないでしょうか?

 

最近の若者のアルコール離れが問題になったりしているようですが、大学生の飲み会における日本酒の一気飲みでももっきりのシーンが記憶に残っている方も多いと思います。日本酒に対するイメージ向上につながるとは到底思えないと一造り手として感じていますので、どうか世の酒場の店長さん方、ちょっと立ち止まって考えてもらえると幸いです。

もっきりは、これから日本酒を飲んでみようと思う方、日本酒初心者の方などには特に飲み方がよくわからないのではと思います。並々溢れんばかりの木枡の縁に唇をちゅうっとやって、グラスにも同じ行為を繰り返す。そしてグラスを持ちながら2口3口とやりだそうと思うと、持ち上げたグラスの底から木枡内の酒がポタポタと滴り落ちてしまい、テーブルに置いてあるおしぼりを雑巾代わりに拭う。グラスが空いてくれば木枡の酒をグラスに入れ直して再びチビチビを繰り返す。

めんどくさい。

オシャレなシャンパングラスで良いんじゃないでしょうか?

最近の流行の酒質は、ガス感の含まれる食中酒。香おり華やかな吟醸酒。アルコール臭を抑えた甘酸っぱい純米酒などでして、そういった酒質の酒をより楽しもうと思うならば、見合った酒器を再考すべきと考えます。

きっと日本酒のイメージが更に向上していき、お客様もよりご満足いただける飲酒ライフが送れるのではないかと存じます。