金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

そもそも日本酒って?

本日のテーマはこれです!

やっぱり原点回帰ということで、「日本酒って何ぞや?」というのを論じてみたいと思います。

国税庁管轄の酒税法に日本酒とは「米・米麹及び水を原料とし、発酵させ濾(こ)したもの」と定義されております。

一つ一つひも解けば、米と米麹を使っていなければならず、そして水を加えていなければならず、発酵を伴ったものでなければならず、更にはその醪(もろみ)を搾ったものじゃないと日本酒ってラベルに書いちゃあいけないよってこと。

厳しいっすね。

僕ら造り手もよくリキュールの製法をある意味うらやましく仲間内で話すことがあります。どういうことかというと、基本的に「醸造アルコールと果汁を混ぜればできあがり」だから。それに炭酸ガスを混入させたりしてシュワシュワ系の缶の商品なんかはお手軽で今のお酒類の中では一番消費者に近いお酒になっているんじゃないでしょうかってところも実にうらやましい理由の一つ。

原料が制限されているってことは、米以外の物品で仕込んだものは既にその時点で日本酒ではありません。米麹を造るにはやはり50時間ほどの手間暇が必然的にかかります。発酵からアルコールを生成しなければならないので、目標のアルコール分にするためには高度な醸造技術を要します。そして、発酵しただけでは「どぶろく」「もろみ」と呼ばれ、日本酒という定義に当てはめるならば袋や布でギュッとやって個体と液体に分離してやらねばなりません。

日本酒って大変でしょ?

でも、主要な物品は1.米 2.米麹  3.水の3点セットながら、甘いものや辛いもの、コクの強いものや綺麗でスムーズなものなど、精米歩合酵母のセレクトなどで日本酒は無限の風味のバラエティさを表現できる優れものであることは皆さんもすでにご存じの事項かもしれません。

日本酒ってすごいでしょ?

百貨店の試飲会などでお客さんと直に触れ合う機会がありますが、「米じゃなくて芋で日本酒造ってくれよ」って言われることが何度かありましたが、それは日本酒とは呼べんのです。と説明させていただきました。お客さん、すごく寂しそうな顔してますけどね(笑)

日本酒の原料の約8割が水から成立するって話もよく出ますが、軟水傾向か硬水傾向かだけでも、仕上がる酒質は異なるものになりますし、例え全く同じレシピでも別々の蔵で仕込んだ酒は、やっぱり別々の酒質のお酒になるので、その辺りが日本酒の複雑さたる所以の一つかも知れません。

日本酒の定義を基本にしながら、今後は日本酒っぽさを残したまま日本酒の定義をあえてはずした商品開発が進んだり、これまでの清酒酵母では表現できない表情になりそうな新酵母で仕込んだ日本酒の他、ワイン酵母ビール酵母なんかを用いて、日本酒のバラエティ度合がまたより一層広がる時代に突入していくだろうと予想しているところです。

飲み手にとっては、楽しみが増える良い時代になりそうですね。