金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

杜氏の役割について

僕は30代前半で日本酒製造の責任者である杜氏(とうじ)の役職について、今年で12造り目のシーズンを迎えているところです。

本日は杜氏の仕事内容や役割について、あくまでも僕の現在の働き方が主になりますがすがご紹介していきたいと思います。

僕の働く蔵は製造数量は400石以下で、いわゆる地方の典型的な中小零細酒蔵のモデルに当てはまると思いますが、その中で現在製造スタッフは全部で5名。僕を入れての人数なので、大企業にお勤めの方なんかから見たら、「少な!」って思うかもしれませんね。昔はよく100石1名で造る人員構成、なんてことも聞いたことがありましたが、400石を5人てのは一般的に見ればやや贅沢な部類になると思います。

杜氏の仕事は言わずもがなで、その蔵の最高責任者でありますから、全ての工程の判断基準は杜氏にあると言って良いでしょう。実際、僕は地元の農家さん達やJAの方々などと稲作の段階から意見交換や勉強会を定期的に開いて、実際お酒の製造現場が求める米はどういったものなのかという要望をなるべくそういった場で、自分の言葉で伝えるように心がけていますし、蔵内の蔵人達には、造るお酒の狙いや任せる作業のアウトラインなども、なるべく彼らに伝わりやすいような言葉や表現を考えながら話をするようにしているので、外部の方でも内部の人間にも意外と人間関係たるものが切っては切れない環境にあるので、それなりのコミュニケーションスキルは日常的に用いているのではないかと考えます。

 

あとは、寒い時期が繁忙期になったり、麹室(こうじむろ)の中は40℃近い温度での作業もあったりします。宿直仕事があったり休日は仕込み予定に準ずるなど不定期になりがちなので、体力や少々のことではへこたれない精神力なども必要になると思います。

 

それと、衛生面の感覚なども、お客様のお口に入るものを取り扱っているので、それなりに日頃から注意が必要です。

 

僕は文系出身で、この仕事についた時にびっくりしたのですが、微生物を扱うことで成り立つ仕事なので、化学やバイオ的な観点でモノを考えることも多いです。その他に、税金が絡む業種の為、計算や細かい帳簿の管理が結構多いので、製造工程の他にも色んな箇所への神経を張り巡らせる必要があるんじゃないかと思ってます。

 

お客様からの問い合わせの返答、見学の対応、酒屋さんのイベントなどへの販売応援、日常的な配達業務、蔵人の労務管理、保健所や県の研究機関との連携など小さな蔵であればこれくらいの業務の幅は当たり前なのかもしれません。

あとは蔵人同士のケンカの仲裁とかね。

社長の運転手に早変わりする時もあります。

もちろん新規採用が必要な時は、面接官となって人物を判断する仕事も伴います。

 

こうやって記していくと、自分でも結構やってるなあ、なんて思えてきました。

本日のブログだけでは書ききれない程、杜氏の仕事は多岐に渡るので、機会を改めてまた追加をお伝えできたらと思います。

 

情熱大陸的に最後は「杜氏とは?」

「究極の中間管理職」であると僕は答えます。

詳細はまた次回。