金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

杜氏さん達が今一番考えていること

皆さん美味しい日本酒飲んでいますか?

 

今飲まなきゃいつ飲むの?

この時期、冷やも常温も熱燗も、全ての日本酒が「うめぇ~」って感じてしまいます。

 

でもね、個人的事情を正直に述べると、冬場って飲酒量減るんすよ僕。

僕が勤務する蔵と自宅は車で約20分の距離にあるんですけど、蔵の設備的なこともあって、夜間にモロミのチェックやお酒の搾り具合を確認しに車に乗らなきゃならないもんで、酒はめっきり控えめになるのです。

 

宿直の時でも、麹の仕事の合間に子供達のお風呂番と寝かし付け役を仰せつかっているので、のんびり一杯なんてやってる暇はなく、17時に一度仕事を上がったら一目散に帰宅して毎日のルーティンをひたすらこなす日常を送っています。

 

最近では娘の幼稚園が冬休みになったため、奥さんとともに実家へ行きましたので、日常ルーティンから解放されて、こうしてブログを綴る時間もできているといった状況です。ただ、子供達がいないリビングは静かでやっぱりちょっと寂しいですね。

 

僕にとって家族はやっぱり酒造りの原動力です。

 

結婚した翌年の全国新酒鑑評会で金賞を獲りましたし、娘が生まれた翌年は同鑑評会で入賞、そして息子が生まれた翌年はまた金賞と、家族が増える度に成績もお蔭様で伸びております。

うちの奥さんはアルコール類が全くダメでして、酒造りのことも良くわかっているようでよくわかっていないようで、いわゆる「好きならやれば」的なスタンスなのですが、休みが不定期な杜氏の仕事を奥さんなりの理解はしてくれていると感じています。

 

余計なプライベートを話してしまいましたが、クリスマスもそろそろ終わりが見えてきましたので全国の多くの杜氏さんが最近考えているであろう項目について語ります。

 

12月は日本酒が一番売れる月なので、製造をストップして蔵人総出で出荷作業に取り掛かる蔵も少なくないと思いますし、お正月休みでも交代でモロミ管理に出てくる必要がある蔵もあると思います。

 

しかし、年が明けて多くの蔵で行われる共通の仕事と言ったらやはり全国新酒鑑評会に向けて出品する大吟醸の仕込みがいよいよスタートするのです。

 

先ほど、全国新酒鑑評会の成績の話をちょろっとさせてもらいましたが、僕も最近は出品酒仕込みの段取りに頭を悩ませております。うちの蔵では出品酒造りは年明け8日から麹の米洗いをスタートする予定ですので、そろそろ始まる新たな戦いに備えて戦術を練るといった状況でございます。

 

酒造りは「毎年1年生」と良く言われまして、昨年の成績はあくまでも昨年の成績で、年が変わればどの蔵もリセットされて同じスタートラインから同じ条件で戦い合うところや、大手も中小零細も条件は一緒であるという平等さも兼ね揃えているのでみんなにチャンスはあるのです。

 

うちも昨年は「金賞」が獲れましたが、それはすでに過ぎたこととして、新たなチャレンジという気持ちで挑みたいと考えています。

 

今年も昨年同様、山田錦以外の酒米での金賞奪取を狙いたいと考えていますので、やりがいも倍増、プレッシャーも倍増、給料現状維持!ってな感じでございますけど・・・

 

今年の夏を稲がどういう状況を過ごしてきたかで米質の硬軟が予測できますし、玄米の成分分析をかければ砕米率や溶解度などを数値化できます。米洗いの吸水速度はどうかな?米の溶け具合はどうかな?仕込配合はこのくらいかな?ってやってると、あっという間に時間は過ぎて行きます。

 

そして、各造りの工程は蔵人全員の力が必要不可欠となるので、一人ひとりの力量を考えながら、「彼にはこれを、彼には別のこれを」といった具合に適正を踏まえてポジショニングを想定しながら、作業の説明の仕方をどのような言葉で理解してもらえるよう伝えるべきかという部分も色々考える時期になっています。

 

また明日もそんなことを考えながら酒造りを行うのでしょうが、酒造りは団体競技です。5月の結果発表にみんなで笑い合えるように試行錯誤を重ねたいと思います。