金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

日本酒業界の今

前のブログでお話ししました通り、うちの蔵での増税後の売上状況がいかなるものか、贅沢品を取扱う我々の現状を報告させて頂きたいと思います。

 

10月に消費税増税が8%→10%に引き上げられまして、キャッシュレス決済の還元や軽減税率対象の物品で万全を期したとの政府からの発表でしたが、「うちの会社に関して」ですが全く裏目に出たと断言して良いでしょう。

 

9月の駆け込み需要はボチボチといった具合でしたが、10月の売上は前年比約80%、11月は約85%、そして12月は90%という結果でした。

 

12月は日本酒業界も当蔵も1年で一番商品が動く時期なのですが、この時期の-10%はその分額が大きく、3か月連続のマイナスは、今期のトータルを予想すれば極めて「厳しい」結果となりました。

 

上記はあくまでも当蔵の事情ですが、昔よく使われた1升ビンの動きはかなりの鈍化傾向にあり、それはいわゆる飲食店向けに酒屋さんが仕入れていくロットになるわけで、その仕入数が減っているということは、おそらく居酒屋さんやお酒を提供している飲食店さんも我々同様厳しい年末になったであろうと予想できます。

 

一方、720mlビンや300mlビンの動きは現状維持か微増といった具合でございまして、おそらく年始のご挨拶に手持ちしやすい容量を選択される方や、家飲みされる方が多かったのではと予想します。こういった「小瓶化」は飲み手の更なる「少量多品種思考」が進んでいることにもつながっているようでして、また普通酒などの定番酒から特定名称酒思考にも飲み手のマインドが変わってきているのではないかと考えます。

 

結局のところ、売上が下がったのは「増税の影響」が一番大きいと考えて間違いないと思いますし、更に消費者の財布のひもが固くなったことにつながり、小瓶化や節約することに行動割合が増えているというのが日本酒業界の現状ではないでしょうか。

 

年が明けて令和2年、僕は益々上記の現象は顕著に進んでいくと予想します。

 

これまで日本酒業界をけん引してきた「獺祭」の国内売上も頭打ちになってきている様ですが、6月、7月くらいでキャッシュレス決済の還元キャンペーンが終了し、8月に東京オリンピックが終了した後の10月~12月の日本酒需要は更に厳しくなっていくでしょうし、状態が深刻化していく蔵も増えていくのではと考えています。

 

もちろん当蔵も例外ではなく同じで、今年の分を来年取り返そうと思っても、そんな簡単にいきそうな「要素」が見当たりません。

 

僕は造り手ですから、良いお酒を少しでも多くの人々に飲んでもらえる酒造りを頑張るのが仕事ですけど、年明け早々、結構な危機感を感じながらの仕事初めとさせてもらってます。

 

まずは、前年割れをどこかで食い止めるところからってところでしょうか?

 

ある程度体力勝負になってきそうな予感もしているので、色んな意味での覚悟も必要なのかもしれません。

皆さんの業界事情はいかがでしょうか?