金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

出品酒造りスタートです。

全国新酒鑑評会に向けた「出品酒」造りがスタートしています。

おそらく全国各地の酒蔵で、同じような光景が「今」見ることができるのではないでしょうか?

作業に関わる杜氏さんや蔵人さんは、そりゃ命懸けですよね。

もちろん僕らも「命懸け」です!昨年の成績はすでに過去のこととして、今この瞬間の戦いは5月の審査発表の時のその時のために、できることの全てをやるというのが出品酒造りになるのです。

その蔵の技術と知識を競うわけですので、気合いの入り方が違います。

うちの蔵の事情としては、昨年はスタッフ4名で挑みましたが、今年はそのうち2名がぬけて、替わりに3名入ったという現状がありますので、本当の意味で「ゼロスタート」ととらえてます。

僕が日本酒業界に入ったおよそ20年前に、宿直仕事の合間などに親方などからよく聞いた話ですが、杜氏さんによっては、鑑評会出品酒に対する「プレッシャー」を過度に感じすぎてしまって、審査発表がなされた時の結果によっては、故郷に帰省する前に自らの命を絶ってしまう方もいるんだということもあったそうです。

金賞に輝けば、お酒はある程度売れますし蔵元からの期待はかかります。お客さんからもそれなりに激励を受けたりもするでしょう。そして、製造チームのリーダーとして蔵人達に造りの方向性が正しいことを示すためにも、杜氏さんは色んな「プレッシャー」を感じるものだと思います。

しかし、鑑評会が全てではないですし、販売されたり飲んでいただく頻度が圧倒的に多いのは「市販酒」ですので、そこは過度な負担を感じすぎない程度の「割りきり」も大事なのではないでしょうか?

命、取られるまではねぇ。

だから、蔵元さんや蔵人さん達も、出品酒造りへの気合いが入るのはもちろんですが、杜氏さん方の気苦労や孤独もそこには確実に存在していることを知っておいてもらえたら、少しでもチームとしての「和」がキープされるのかなぁとも思いますので、杜氏さんがもし困っていたり、悩んでいる表情を感じたら、タイミングを見ながら気配り・目配り・心遣いなどができたら、親方も「ほっこり」する瞬間が生まれるかもしれませんよ。

是非全国の出品酒チャレンジに入っている杜氏さんや蔵人さん方、よりハイレベルな争いができるよう頑張りましょう!
そして、5月にはより多くの皆さんと健闘を称え合えることを望みます。

そして、日本酒ファンの皆さんやお酒に興味をお持ちの皆さん、多くの全国の酒蔵で現在行われている 「風物詩」を知っていただけますと幸いです。造り手は命懸けの挑戦をしています。是非、応援してください。素晴らしい吟醸酒がたくさん世の中に出回ることを願いながら仕事に励みます。