金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

酒造りに向いているタイプ。

今回は前回の内容の続編です。

日本酒造りの門を叩こうかどうかと悩んでいる方などには参考になるかもしれません。

お酒造りにどういう人が向いているのか?

結局は「やる気」であることは前回をブログで記したところですけど、もう少し具体的に話を進めてみたいと思います。

僕は22歳で日本酒業界に入ったのですが、その頃から「将来は杜氏になりたい!」とはっきりとした目標設定をしていました。最初に入社した蔵は造り手の人数が多くて、超ベテランや年下の先輩までバラエティーに富んだ年令構成となっていて、それはそれで組織に活気を感じられたものです。

もちろん他の人達は「ライバル」ですから、一蔵一人の杜氏の座に就くためには一体何人のライバル達を抜いていかなければならないかというような「算段」を自分なりによく考えていました。

結局何が言いたいかというと、自分は酒造りの世界でこうなりたい、という具体的な目標設定ができている人の方が、自分には何が足りなくて、誰に何を教えてもらったり、技をみせてもらう必要があるのかなど、行動の仕方がワンランク上になっていくものだと考えます。

実際に、僕も意識は結構高いところにあったのは事実ですし、勉強する時間を工面したり、この人に話を効いてみたいと想ったら、実際に会いに言ったりしたりしたものです。

ただ「酒造りをやってみたい」と思ってこの世界に入ってくる人は長続きしません。日本酒の製造現場に入った時点で何となく満足しているような人です。

仕事としての見返りを考えてみても、杜氏と蔵人を比べたら、絶対杜氏を目指さないと、蔵人はどうしても昔ながらの考えと言いますか、「修行の身」のような待遇になりがちです。プロ野球の世界では若手選手に「グラウンドには銭が落ちている」とハッパをかけて頑張って厳しい練習に耐えさせるなんて話を聞きますが、日本酒の製造現場でも、「酒蔵には銭が落ちている!」的な意識を持って取り組めば、自然とモチベーションが高く維持されやすくなり、寒さや眠さにも気持ちの面で耐え得るケースが増えてくるのではないかと思います。

日本酒の作業って、地味で単純なものが多いので、そういう作業に当たる場合でも、意味や意義をしっかり考えられて、丁寧で早い作業をクセにできるよう、普段からコツコツ積み重ねていけるような姿勢も大切なことと思います。

お客様の口に入るものを造る仕事ですから、誠実な仕事ぶりができないと、商品としてアラが出やすいでしょうし、技術の向上にも限界が出てきます。

もし日本酒業界で活躍したいと考えている方の参考になればと思い、ちょっと考えてみました。

今回はそんなところです。