金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

ボージョレ・ヌーボー? ボジョレー・ヌーボー? ~新酒について~

結論としては、「ボジョレー」って気がしてますが皆さんはいかがでしょう?

 

何の話がしたいのかというと、「新酒」についてです。

ワインのボジョレー・ヌーボーは今月の第三木曜日(21日解禁)に今年もリリースされます。温暖な気候に大変恵まれ、良質なブドウの出来の為、非常においしく仕上がっています、ってのは毎年お決まりのセールス文句。

実はうちの蔵の新酒もすでに出荷がスタートしておりまして、御陰様で今季も順調な滑り出しを見せております。

でもね~

一言で新酒ができましたと言っても、実は各社色んな解釈で販売しているんですよってことを以下に述べておきたいと思います。

1.新しい造りのシーズンに入って一発目の仕込みの酒としての季節限定商品。

2.新しい造りのシーズンに入って造った全ての酒を指す場合。

3.年明け一発目の季節限定商品。

4.単純に新しい造りのシーズンに入った記念を銘打って出荷する季節限定商品。

5.新米が入荷後、その新米で仕込んだ酒を新酒とする。

蔵によってセールスに何とかつなげるために、上記のように色んな解釈でラベルに文言を記しております。最近では造りに入る時期が早まる傾向にあるため、古米で仕込んだ酒を新酒とする蔵も多いです。酒屋さんの棚取り合戦も、何だか毎年早まっているような気も・・・

 

新酒って定義は、基本的に2の新しいシーズンで造られたもの全てという酒を新酒とするのが正しいのですが、販売するにあたり、色んな解釈でってのが結構多いので、飲み手の立場からすれば、どんな新酒を飲みたいか?よくラベルや店員さんの情報を聞いてから購入するのも楽しくもあり、間違えも防止できるのではないかと考えます。

 

消費者に誤解を与えない表示基準というのも、ここ数年で日本酒に限らず様々な商品で改善命令や指導があるようですが、今回のテーマもご指摘によってはグレー、もしくは黒って場合もあるかもしれないですね。

 

あとね、日本酒の新酒でもう一つ知っておくと良いうんちく話があります。

新しいシーズンに入って一発目の仕込みを新酒として季節限定商品として販売している場合に多いのですが、搾り機が綺麗になっていることで「袋香」(ふくろか)という粉っぽいような、紙っぽいような、味としては不自然にざらつく味わいにも感じるオフフレーバーがお酒に付着する場合があります。あんまりひどいと一般のお客様でもわかると思うレベルのものもありますので、ちょっと気を付けて試してみると良いでしょう。

 

搾り機が綺麗に整っていることでのその布の部分の香おりが移るのが原因ですので、特別人体に悪いとかいう話ではないんで誤解のないようにお願いします。

 

そういう酒は、鑑評会などの審査では減点対象になりますが、市販酒の新酒としてはある意味個性といての捉え方もできるでしょう。

昔は、一発目のお酒は普通酒などの定番酒を仕込んで一通りの工程をある意味「試運転」と捉えてから特定名称酒などの季節限定商品の造りに入るってのが基本だったんですけど、最近の造りはオープン戦なしのいきなり高級酒仕込みから!なんてのも普通になってきていますんで、そういう酒ってオフフレーバーが付いちゃうと濾過工程を施して香りを除去しても不自然な酒になりやすいのです。

製造現場の対応方法としては、香りの付きにくい素材の搾り機の布に替えるとか、袋香を出しにくい布洗浄剤などもあるので、各蔵の杜氏さん達も色々とその蔵の事情を考えながら試行錯誤していることと思います。

 

色々と新酒をネタに書いてきましたが、いよいよ日本酒が美味しい季節になってきましたので、ボジョレー・ヌーボーも良いけど日本酒も僕は推したいと思います。