金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

杜氏の出張。

今日は朝から仕込みを終えたあと、酒造講和会に出張でした。

毎年のことですが、この時期に各県のお酒の研究部門の先生方と国税局の酒類鑑定官の先生方、そして各地区の税務署の署員の方々と各県の酒造組合が合同で主催して、酒類メーカーや製造責任者を対象にした勉強会を開催するのです。

 

毎年、酒税法の改定やら前年度の鑑評会の詳細を解説してくれたり、中々有意義な会となっておりますが、一点耐えがたいのは時間が長いこと。

 

午後まるまるかけて行われるので、朝が早い我々としてはちょうどウトウトしてきやすい時間帯となるので、睡魔という見えない敵との戦いも毎年の課題となっております。

 

今年の先生方のお話で注目すべき点を何点か挙げたいと思います。

1.製造所の記号表記制度の改定が迫っていること。

2.今年のお米の溶解度予測について。

3.当県の鑑評会における現状と課題。

まず1ですが、食品表示義務の一環として認められてきたお酒の委託醸造の表記が厳しくなりますよってことなのですが、詳しく述べれば、日本酒って昔から「桶買い」って呼ばれる他社メーカーの酒を購入して自社のラベルを添付して市場に出すって販売手法が意外と多く続いているのですが、他社の酒を購入して販売しても良いけれど、自分のところで瓶詰めはやってねってことで来年4月から法改正となる予定です。これまでは委託製造の酒を瓶で購入しても、自社の名前が明記された近くにアルファベットや数字などを記載していれば何ら問題なかったのですが、今後は基本的にアウトってことになりますよ。ということ。

ぶっちゃけ、お酒のタイプと量によっては、自社で米買って人雇ってってやるより、OEMしちゃう方が原価が安く抑えられるケースも多いので、中小零細が多い日本酒業界でこれまでの販売手法が認められないとなれば、休造やら廃業に追い込まれる蔵も出てくるのではと危惧されております。

 

次に2。夏の天候がどういう気温をたどったかで米質が変化することは、当ブログでも以前紹介したことがありますが、より詳細な分析方法を効率的に実施することで、これまでよりも早期に予測データを蔵へフィードバックできそうですというお話しで、非常に期待できる内容でした。

 

最後に3。うちの県は(どこかはまだ言えない)おとなしくて控えめな人が多くて、一杯始めないと積極的な酒造議論に発展していかないところが良くも悪くもって部分なんですが、昨年度の当県はあんまり鑑評会の成績が芳しくなかったので、もう少し先生方を質問攻めにするくらいの熱気があっても良かったかなと個人的には感じたのでした。こういった面では、やっぱり福島県山形県あたりは特に横のつながりが強く、旗振り役の先生方の意識も高くて素晴らしいですね。

 

いずれにしても、杜氏さんもずっと蔵内にこもっているばかりではないというのを世間様には知っておいていただけますと嬉しいです。とはいうものの、ほとんど出張は限られますけどね。頂いた情報を一旦自分の中で消化させていただいて、うちの蔵で応用できそうな事項については積極的に採用してみたいと考えてます。