金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

アルコール添加酒あるあるパート2

本日のテーマは昨日の続き。

昨日は醸造アルコールの全面否定はもはや議論に無理があるのではないかという見解を述べさせていただきました。

 

そんなわけで、今日はアル添の議論をもう少し掘り下げてみようと思いますのでどうかお付き合い下さい。

 

皆様、ところでアル添のタイミングってご存知ですか?

 

日本酒マニアの方は知っている方も多いかもしれませんが、アル添作業は上槽(じょうそう)と呼ばれる搾りの作業の直前で入れると言うのが通例となっております。

添加用の醸造アルコールは、大体30~40%程度のアルコール濃度にして使うんですけど、結構な高アルコールなので、清酒酵母がまだまだ元気なタイミングで入れてしまうと清酒酵母自身に相当なショックを与えることになり、オフフレーバーの原因になったりという現象が起こりやすくなってしまいます。また、上槽の後、清酒酒粕に分離した後に添加するとなると「酒税法の規定から外れてしまう」ので、せっかく日本酒を造ろうと様々な工程を経て、汗水垂らして頑張っても、最後の最後で順番を間違えちゃうと日本酒にならないということになってしまうのです。

 

えぇ~!!!って感じでしょ?

 

だから酵母へのショックを極限まで軽減できるタイミングや清酒製造の定義の範囲などを考慮すれば、やっぱり上槽の直前が良いよねってことになるのです。

 

でもね、この醸造アルコールの添加のタイミングについて、以前から僕は疑問を持っていました。なぜかというと、「ちょっとデメリットありすぎない?」と。

 

例えば、モロミの段階で芳醇な香りが出ていたとしても、醸造アルコールを添加することで醸造アルコールに芳香成分が吸着してしまい、そのまま酒粕に持っていかれてしまいます。

更に、醸造アルコールを入れて醪を搾れば、酒粕醸造アルコールが移行することで狙ったアルコール分になりにくく、酒量も減るという現象につながりやすいです。酒量を取りたいと搾りを頑張れば、圧過多により酒質に苦味・雑味が出て悪循環につながります。そして先ほどから述べている通り、酵母に対するショックが起こりやすく、搾りのタイミングの見極めが難しいというリスクもあるわけで、あんまりこの「順序」にメリットを感じてこなかったのです。

 

もしかしたら全国の造り手の方々の中にも、同じような考えをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

結局「先か後か」の議論になるのですが色んな鑑定官の先生方にも聞いているのですが、醸造アルコールをモロミ段階で入れてあるのか、上槽後に入れたものなのかを判別する明確な手段は現段階ではわからないとのこと。

 

清酒モロミの発酵由来のアルコールなのか、醸造アルコールとして添加したアルコールなのかを判別する方法はあるらしいのですが、そもそも純米酒にアル添できるかと言えばそれは違うに決まっているわけで、今回のテーマとはちょいずれですからね。

 

日本酒としての商品価値を観点とした場合、先か後かで風味がどのように変わるのかというのも気になります。

僕も造り手として非常に興味がありますので、「その筋の方」に聞いてみましたが、どうやら先に入れるパターンより、後に入れたパターンの方が「マイルド感」が増すらしいですよ。あくまでもその筋の方の意見ですが。

消費者にとってより美味しい商品造りにつながって、その中で蔵元も造りやすい可能性が拡がって利益もでたら、結果、酒税の納めも高まるように思うんですけどね。

 

いかがでしょうか国税庁さま?

 

酵母にやさしく、酒量もとれて、飲み手もハッピー!

 

僕は、搾った後にその時のアルコール分や酒質でアル添量を決められた方がビシッと酒質設計が決まりやすいような気がしています。

先か後かというよりは、メーカーの裁量に委ねるってのが至って今風な気もしておりますし、更に世の中がアル添論議が活発に盛り上がることを願います。

おわり。