金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

今夜は宿直。

麹が出来上がるまで約50時間くらい必要です。あくまでも、日本酒用の原料にする場合ですが。

麹造りは日本酒製造にはかかせないもので、麹の出来不出来がお酒の善し悪しに直結すると言っても良いくらい。

中には機械に頼った麹造りをしているメーカーもあるでしょうが、大吟醸や鑑評会出品酒などの麹造りは、大箱法と呼ばれるものや、小蓋法と呼ばれる昔ながらの手造りによって丁寧に少量ずつ造られるのが一般的です。

どうしてもそういう麹の造り方は、労力が伴い、
高度な技術を要求されます。

今夜の僕の仕事は、その管理を行うこと。
まさに、大吟醸用の麹を造るタイミングにありますので、それなりの気合いも必要です。

うちの蔵では、大箱法という製造方法を採用していまして、蒸し上げたお米に種麹という麹の赤ちゃんを散布してから明日の朝8時に完成予定ということで約48時間のファイトとなります。

麹造りは前半は保湿と保温、後半は保温と乾燥が上手くできるかの分かれ目です。

麹はざっくり「カビ」の仲間ですから、水分のあるところに繁殖したがります。日本酒の高級酒に要求される麹は、突きハゼ方(つきはぜがた)も言われる麹でして、ただ米に麹菌が繁殖していれば良いというものではなく、米の中心部に向かって菌糸が伸びていき、米の表面が金魚の出目金のような状態になっている菌糸の繁殖状態が突きハゼと言います。

そういう麹は、酵素のパワーが強く、お酒になった時の香りが良好で、切れ味も良くなりやすいのです。

麹の造りでの大変なところは、やはり睡魔との戦いです。2~3時間ごとに熱い麹室へチェックに行く必要があるので、自分との戦いに勝たないと良いお酒になる可能性は、徐々に少なくなっていきますから。

中には宿直に関する労務管理を現代風に作業者の負担軽減を考慮した形をしいてくれている蔵もあるでしょうが、うちは基本的に宿直明けも普通に夕方17時まで仕事します。手当ても特別設けられていなくて、冬季の仕込み手当てとして合算されている形態をとっていますので、体力的、精神的なタフさを持ち合わせていないとしんどいでしょうね。
僕は、宿直明けはよっぽどじゃない限りは半日とか15時とか、ちょっと早めに帰宅するようにしています。他の蔵人は、麹が出来上がった朝に帰宅させるようにしていて、翌日みっちり働くという会社の方針にはあえて従ってないです。
きっちり話し合えば良いんでしょうけど、僕が責任持って進めてしまえば良いものだろうとして、勝手ながら権限としてそうしてます。

だって配達の居眠り運転とかで事故っちゃたらどうするの?って感じだし、どうしても宿直明けの仕事の精度は落ちますので、その方が良いと考えてます。ホントは会社側がもっと理解と労いの行動に出てくれたらありがたいんですけどね。

うちはどうしてもそんな空気にはなってないので、あえて話し合いをすることで、険悪なムードになるのは面倒だなって感じでやってます。

話がだいぶそれましたが、大体うちの蔵では月に3回くらいの割合で宿直のローテーションを組むようになってます。

最近では、ネットなんかで麹を造れるマシンなども販売されているようで、僕もちょっと興味を持っていたりしています。

麹って国の「国菌」にも指定されてます。
もっと麹が一般的になればと願いながら、今夜の宿直に励みたいと思います。