金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

蔵人達のチャンピオンベルト。

何のこっちゃよくわからないタイトルをつけてしまいましたが今日は我々日本酒造りに関わる人間の働き方の様子について記していこうと思います。

酒造りの現場は、日々お酒を運んだり、米洗いの作業や米の受け入れ等で重い物を運ぶ仕事がとても多いです。
ちなみに我々がよく持ち運びする1升びん6本入りP箱は約11kgありますし、720ml入り12本入りP箱は約9kg、そして米袋1袋は関しては30kgの重量があります。

洗米係りは、大体入社して日の浅い若手が任されることが多いのですが、1日の処理量が20~30袋(600kg~900kg)に及ぶ蔵もあるでしょう。

出荷係りなどは、パートさんにお願いするパターンが多いのですが50歳前後の女性の方にとっては更に体に対する負担は大きなものになるのです。


タイトルのチャンピオンベルトについてですが、酒蔵で働く人間の多くは「骨盤ベルト」や「腰ベルト」と呼ばれるゴム製であったり、マジックテープで簡単に締められるものであったり
腰への負担軽減を目的に巻いている人がとても多いのです。チャンピオンベルトと呼ぶ所以ですが、数年にわたって酒蔵に従事していると、それなりに頑張ってきている人達が
ほとんどですから、会社への貢献も積み重ねて、他の従業員さん達からもある程度頼りにされるような存在になってくるわけです。そんな数々の勲章と引き換えに「腰痛」に悩むことも
多くなってくるわけで、ある意味、「ベルトを巻くようになってきたら一人前」とあんまり嬉しくない表現をされる方もいらっしゃいます。

腰痛の他にも首、肩、ひざ、頭痛、慢性疲労、睡眠不足など重労働に伴う色んな悩みを持っている蔵人をたくさん知っています。

杜氏さん方も一緒でして、ぎっくり腰とかヘルニアの手術をしながら酒造りを頑張る人も多いですし、あんまりこういう話は世の中には出回りませんが、酒造りに関わるということは「身を粉にする」
ほどの代償が伴うことに通じることが多いです。


もちろん僕も腰痛持ちです!


ここ3年連続でぎっくり腰になって3~4日寝たきりになる経験をしております。
僕は比較的スポーツマンタイプの人間で、体のバランスにはある程度の自信があり、これまで大きなケガを経験したことはなかったのですが、俗にいう「40なったらガクッとくるよ」の典型的なパターンに
はまっているといって良いでしょう。正直かなり悩んでいます・・・

全国の蔵人さん、杜氏さんに他に多いのは健康診断の肝臓の数値がよくないこと。
大体「よく飲む」ので必然的にガンマがね。

話をチャンピオンベルトに戻しますが、僕自身も腰ベルトをキュッと締めながら酒造りと向き合ってます。そして、若い頃みたいに無理は控えるようになってきました。
体が資本の酒造りですから、無理をしてつぶれてしまっては厳しい酒造りシーズンに穴を空けてしまいますし、最悪杜氏が不在になる事態となれば仕込計画のストップ、変更を余儀なくされることにつながって
みんなに迷惑をかけるようになってしまいます。ベテランになってくれば、力の入れ処みたいなタイミングは経験的にわかっていますから、そういうペース配分は意識的に行っております。

世の中多くの人が腰痛で悩んでいるみたいですが、日本酒の造り手も「一生懸命やればやるだけ」ある意味職業病と言っていいほど発生率は高まるのでしょう。

介護の分野や物流の分野ですでに導入されている負担軽減のアシストロボットなどもこれから酒造りの現場で導入する蔵が増えてくるかもしれませんが、僕は是非積極的に使ってみたいタイプです。

12月の繁忙期も残り10日!
デイケアを意識的に行いながら頑張っていきたいと思います。