金賞杜氏の日本酒情報局

日本酒製造現場からの情報発信

酒粕の今。

寒さがかなり増してきまして、朝、布団から出るのがマジでつらい!と感じている人も多いんじゃないかと思います。

そんな寒い季節、酒蔵従事者として提案したいのは、酒粕を用いた飲み物やお料理です。

酒粕っていうのは、ご存知の方も多いと思いますが、お酒を造る過程でできる副産物です。米と米麹と水が一緒になったものをモロミと言いますが、もろみを搾って、液体を絞り出したものを日本酒で、残った搾り粕を酒粕と呼びます。

スーパーに並んでいる多くの酒粕が、大手メーカーの色の黒ずんだ酒粕を見る機会が多いですが、我々蔵人にとって自信を持って皆さんにお届けできる酒粕は、精米歩合60%程度の純米酒のモロミを搾ったボソボソとした酒粕です。

一般的にこのボソボソとした酒粕のことをバラ粕といいます。

一方で、きれいな板状の酒粕を板粕というのですが、バラ粕か板粕というのはお酒の搾り方によって変わります。

一般的なお酒の搾り方は薮田(ヤブタ)というアコーディオンの大きくしたような機械で行われ、薮田で搾ったお酒は、酒量も多く酒粕は薄く硬くなりやすくなる傾向があります。お酒にとっても、お酒と酒粕をスピーディーに分離することができるので、フレッシュでクセの少ない日本酒に仕上がる場合が多いです。

一方で、袋しぼりという木綿製の10リットルくらいモロミが入る布袋を用いた搾り方を行うと、酒量は落ちますが、無駄に搾りきらないため、お酒が雑味が少なく、酒粕にはお酒が残りやすいため、しっとりとしてマイルドな風味が残りやすいものになります。

いずれにせよ、酒粕を作るための酒粕というのはなく、お酒造りを前提とした副産物という位置づけは確認しておかなければなりません。

そんな最近の酒粕需要ですが、うちの蔵では昨年までは予約が入るほど、酒粕は大人気でしたが、今年はそれほど出荷のペースは早くはなく、極めて落ち着いた気配が続いておりました。

さすがに今月に入って、段々出荷数が増えてきましたが、消費税の増税の影響もあってか、あまり出なかった時期は心配していました。

増税の影響とは申し上げましたが、酒粕は食品に該当するため、軽減税率の対象商品となっております。お酒は残念ながら消費税10%にて対応となりますが、酒粕は据え置きの8%ですので、世の中の皆さん、是非酒粕をお求め下さいませ。

酒粕の使い道というのは、日々のお味噌汁に少し入れてもいいですし、寒い時期はシチューやグラタンに入れるのも面白いと思います。バラ粕を用いれば、しっとりしていて溶けやすいですから、それぞれのお料理にも、なじみやすいのではないでしょうか。

もちろん鍋料理にもバッチリです。

バラ粕はお酒が若干含まれておりますので、料理酒を使う必要性もありません。

板粕を使う場合においては、少々日本酒を足せば同じこと。

酒粕の栄養成分ですが、食物繊維を豊富に含んでいるため、便秘予防にはもちろん、体を芯から温めて、お肌の健康にもバッチリのようです。

数年前のNHKためしてガッテンで紹介された1例ですが、酒粕に含まれているレジスタントプロテインというたんぱく質の一種が、非常に体に有益をもたらすという紹介がされました。

全国の酒蔵で、ためしてガッテンが放映された翌日、酒粕フィーバーが起きたことは業界の伝説となっているくらいです。僕も密かに、また酒粕フィーバーが起きないかなーと思っている人間の1人です。

他には、この寒い時期に有名なのはやはり甘酒ですです。

ちょっと塩を入れて引き締めにすると大人の味わいが楽しめるはず。甘酒はすでに冬の風物詩といえるかもしれません。

本来は夏の飲み物であったことを知ってる方も多いかもしれませんけどね。

甘酒に関しては、僕も語りたい事が多いので、また別の回でたっぷり取り上げてみたいと思っております。

酒粕は、紛れもない発酵食品の1つですから、上手に日々の食事の中で使えれば、体調管理の一役を担えるのではないでしょうか。

スイーツ好きの人などは、バニラエッセンスと混ぜたり、生クリームに混ぜたりする使い方も面白いと思います。

酒粕の効能は、まだまだ解明できていない部分が多いようで、先人の生んだ発酵文化の可能性は、まだまだ今後新たな発見に辿り着くのではと期待を持てます。

あ、板粕のこと、褒め方が少ないような今回のブログになっているように感じる人もいるかもしれないので最後に補足を!

板粕をオーブンでちょっと焦げめがつく程度焼き上げます。そのまま食べても美味しいですし、ジャムやマーマレードを塗ればまた新しい味わいが楽しめますよ。
僕らもよく蔵でやってます!